愛媛大理数学'08年[5]
行列A,E,Oを
とする。ここで、a,b,c,dは実数で、ある実数kに対して、
, をみたしている。
(1) を示せ。 (2) とおく。自然数nに対して、 が成り立つことを示せ。
(3) のとき、 (nは自然数)を求めよ。
【広告】ここから広告です。ご覧の皆さまのご支援ご理解を賜りたく、よろしくお願いいたします。
【広告】広告はここまでです。
解答 固有値重解型の行列の累乗の問題です。素直に対角化したり、スペクトル分解したりするのでは解決できないので、特殊な技巧が必要になります。本問では、(2)でその技巧が提示されていて、(2)を利用してを求めることになります。
・・・@ よって、
(T) のとき、 より、成り立ちます。
(U) のとき、 が成り立つと仮定します。この両辺に左からAをかけて、
@より、なので、 よって、のときにも成り立ちます。 (T),(U)より、自然数nに対して、が成り立ちます。
別解 と書けて、 ・・・A (1)より、なので、のとき、 です。これより、Aでは、,のところだけが生き残って、
(3) のとき、ハミルトン・ケーリーの定理より、 となるので、(1)のの場合になります。 また、(2)の結果でとすることにより、 ......[答]
追記.固有値重解型の行列の累乗の問題を初めて見る受験生には、(2)の別解は、あまりに技巧的と映るかも知れませんが、最近少なくなったとは言っても、ポピュラーで古典的な技巧なので、スペクトル分解の形と見比べながら頭に入れておいてください。例えば、早大理工'92[1]:
【広告】ここから広告です。ご覧の皆さまのご支援ご理解を賜りたく、よろしくお願いいたします。
【広告】広告はここまでです。
とする。条件,をみたす整数a,b,c,dを成分とする行列を適当に選ぶとき、が成り立つ。このとき、
(1) x,yを求めよ。
(2) ()を求めよ。
【広告】ここから広告です。ご覧の皆さまのご支援ご理解を賜りたく、よろしくお願いいたします。
【広告】広告はここまでです。
では、(1)は、実質的に整数問題なので、
の左からPをかけて、
∴ ,,, ・・・@
第3式より、 ・・・A
これを第1式×に代入すると、より、
∴ ......[答]Aより、
@の第4式より、,
これとより、
とyは2の約数ですが、より、こうなるのは、,のときのみです。 ......[答] とすることになりますが、(2)は、(1)と無関係に、
ハミルトン・ケーリーの定理より、 ・・・B
として、二項定理より、
Bより、では、となるので、 ......[答] とするべきです。
さて、2008年度の入試問題で、言わば「行列の漸化式」を考えるようになっている問題が目に付くので、まとめておくことにします。以下、,B,C,D,P,Qを2次の正方行列、Eを2次の単位行列として考えることにします。
という漸化式は、言ってみれば、公比Bの等比「行列」列のようなものですが、これは、数列と同じく、一般項は
です。
2項間漸化式:
・・・@
は、数列の場合と同様に、とをDに置き換えた
・・・A
を考えると、
従って、が存在すれば、
として、@−Aを作ると、
「行列」列は、公比Bの等比「行列」列なので、
∴
となり、を行列の累乗の問題として求めれば、数列の場合と全く同様にして解答できます。
が存在しない場合は、数列の場合のようには行きません。として、@の項番号を1つずつ小さくしてBを順次かけた式を作り、
・・・・・・
これらを足し合わせると、両辺の,,・・・,が消し合って、
()
が存在しないとき、Bは固有値1をもっています。もう1つの固有値をuとしてであれば、
,
を解き、
,,,,
(スペクトル分解を参照)より、
()
∴ ()
となります。
固有値1が重解になっている()場合は、本問愛媛大(2)の結果を用いて、
∴
()
3項間漸化式:
・・・B
では、かつが存在すれば、Bを、
・・・C
・・・D
と2通りに書き換えて、
が公比Cの「行列」列であることから、
・・・E
が公比Bの「行列」列であることから、
・・・F
E−Fとしてを左からかけることにより、
と、数列と同様に求めることができます。
のときにはDは作れますがCが成立しません。Fは使えるので、が存在しない場合も含めて以下のようにします(このタイプの問題は、山口大医'08年[4]を参照)。
として、Fの項番号を1つずつ小さくしてCをかけた式を順次作り、
・・・・・・
これらを足し合わせると、左辺の,,・・・,が消し合って、
∴ ()
,の形を求めれば、を求めることができます。
以下に2項間漸化式の場合の問題例を挙げます。
金沢大理工'08年前期[1]:
自然数nに対して、2次正方行列を
により定める。また、2次正方行列は
() を満たすとする。次の問いに答えよ。
(1) 数学的帰納法を用いて
() が成り立つことを示せ。
(2) ある2次正方行列Cに対して、がすべてのnについて成り立つとする。このとき、Cを求めよ。 (3) (2)の条件をみたすのうち、逆行列をもたないものはに限ることを示せ。
解答
(1) (T) のとき、 より成り立ちます。
(U) のとき、 が成り立つと仮定します。
より、のときも成り立ちます。 (T),(U)より、
() が成り立ちます。
注.として、ハミルトン・ケーリーの定理より、 より、Dの固有値は2と3で、,を連立すると、 ここからも、
となります。
・・・@ とをGと置き換えた式 ・・・A より、
を左からかけて、 @−Aより、
は(1)のと全く同じ形の漸化式に従っています。 ・・・B となるので、同様に、
∴ ・・・C ・・・D Dがすべてのnについて成り立つとすれば、においても成り立つので、 においても成り立つので、 として、 ∴ ,,,
これらを満たすa,b,c,dは、のみで、 ∴ 逆に、のとき、すべてのnについてDが成り立ちます。
∴ ......[答]
(3) (2)よりなので、Cにおいて、 Bより、
の行列式は、 のとき、
のとき、,より、
よって、の中で逆行列をもたないものはに限ります。
阪大理系'08年前期[1]:
2次の正方行列,,,,・・・を
で定める。ただし、Oは2次の零行列、BとCは2次の正方行列とする。
(1) をBとCを用いて表せ。ここでEは2次の単位行列とする。 (2) BとCを
, とするとき、を求めよ。
解答 Cの累乗に規則性があるので、この問題は誘導通りに解答します。
(1) 与えられた漸化式を用いて、を計算してみます。 なので、 ・・・@ これより、
() と予測できます。
(T) のとき、Aより予測は成り立ちます。 (U) のとき、予測が成り立つとして、 (T),(U)より、において予測は成り立ちます。
∴ ......[答]
(2) (1)の結果の中にCの累乗が出てくるので、,,・・・ を調べてみます。 従って、nを0以上の整数として、
(1)より、
右からをかけて、 ......[答] 追記.2項間漸化式のようにしてやろうとすると、行列Cの固有値が虚数()になり、うまく行きません(高校範囲外であれば行列の成分に虚数が出てきてもよいのですが)。
広島県大'08年[5]:
条件, ()で定められる2次の正方行列を考える。ここで、,である。
(1) を求めよ。
(2) 数学的帰納法により、は逆行列をもつことを示せ。
(3) を示せ。
(4) を求めよ。
解答 数列であれば、
という漸化式で、両辺の逆数を考え、
とすると、が等差数列になる、というタイプのものです。
行列では、逆行列を考えると等差数列と類似の形が出てきます。
(1) ......[答]
(2) (T) のとき、(1)よりは逆行列をもちます。 問題文の漸化式でとして、 右からをかけると、 これは、の逆行列がであることを意味します。 ・・・@
よって、も逆行列をもちます。 (T),(U)より、は逆行列をもちます。
(3) @より、
(4) (3)の結果を繰り返して使うことにより、
∴ ......[答]
九州工大工'08年前期[3]:
行列A,B,,を
とする。2次の正方行列, ()を
, により定める。次の問いに答えよ。
(1) ,を求めよ。 (2) とする。すべての自然数nに対して が成り立つことを数学的帰納法によって示せ。
(3) 自然数nに対してとおく。を求めよ。 (4) 自然数nに対してとおく。を求めよ。 (5) 自然数nに対してを求めよ。
解答 行列の連立漸化式ですが、数列の連立漸化式と同じ感覚でできます。
(1) ......[答] ......[答]
(2) (T) のとき、より成り立ちます。 (U) のとき、が成り立つと仮定します。 よって、のときも成り立ちます。 (T),(U)より、すべての自然数nに対して、が成り立ちます。
(3) ・・・@ ・・・A @+Aより、
(4) @−Aより、
(3)と同様にして、
(5) ......[答]
数学TOP TOPページに戻る
各問題の著作権は
出題大学に属します。©2005-2024(有)りるらる 苦学楽学塾 随時入会受付中!理系大学受験ネット塾苦学楽学塾(ご案内はこちら)ご入会は、
まず、こちらまでメールを
お送りください。