関西学院大物理'08年[1]
図のように半径Rの半円部ABC,半径Rの半円部DEF,長さの直線部CDからなる絶縁体の細いレールが水平な床上に設置されている。レールはひとつの鉛直面(xy平面、x軸は水平方向、y軸は鉛直方向)内にあり、直線部CDはx軸に平行である。物体1の質量はm,物体2の質量はである。物体2は正に帯電しており、半円部DEFの中心点Gには物体2の電荷と同じ大きさの負電荷が固定されている。重力加速度の大きさをg,静電気力に関するクーロンの法則の比例定数をkとして、以下の問(1)〜(5)に答えよ。なお物体1と物体2の大きさや、レールと物体1,レールと物体2との摩擦、および空気抵抗は無視できるものとする。
(1) 点Aで物体1に水平右向き(x軸の正方向)の初速度を与えると、その速さが十分に大きい場合には、物体1はレールの半円部ABCの内周側をレールから離れることなく、A→B→Cと移動できるが、速さが小さい場合には物体1は半円部ABCから離れて落下する。
(a) 物体1がレールの半円部ABCから離れずに点Cまで到達できる、点Aにおける最小の初速度の大きさを求めよ。
以下では物体1は、問(a)で求めた初速度で点Aよりレールに沿って運動を開始する。
(b) 物体1がレールから受ける垂直抗力の大きさを、レールに沿った点Aからの距離の関数として点Aから点Dまでの範囲について求め、グラフに表せ。
物体1は点Dで静止していた物体2に衝突する。この衝突は完全弾性衝突であり、物体1と物体2の間での電荷の移動や物体2の電気量の増減は生じないものとする。
(2) 衝突直度の物体1と物体2の速さは、それぞれいくらになるか。
(3) 衝突後の物体1が、最初に床に達した地点を点Hとする。HF間の距離はいくらになるか。
(4) 物体2がレールから離れることなく、半円部DEFの外周部を移動し、点Fに達するために必要な電気量の大きさの最小値を求めよ。
(5) 点Fに達する直前の物体2の運動エネルギーと、点Hに達する直前の物体1の運動エネルギーの総和は、物体1が点Cを通過した瞬間にもっていた運動エネルギーからどれくらい変化しているか。
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解答半円部ABCではレールから受ける垂直抗力によって物体1は不等速円運動します。半円部DEFでは、物体1は半円の外側に飛び出してしまい、物体2はクーロン力によって不等速円運動します。
半円部ABCの中心をO,物体1の位置をP,物体1の速さをvとします。
(1)(a) 物体1がレールから受ける垂直抗力(中心に向かう方向)を,とします。物体1が受ける向心力は,及び、重力の中心方向成分です。 物体1の運動方程式: ・・・@
点Aの位置を位置エネルギーの基準にとり、物体1の点Aにおける速さをとすると、点Aにおける物体1の力学的エネルギーは、運動エネルギー:のみで、点Pにおける物体1の力学的エネルギーは、運動エネルギー:と位置エネルギー:です。
点Aと点Pとの力学的エネルギー保存より、 ∴ ・・・A
これを@に代入して、 ∴ ・・・B
物体1がA→B→Cと移動する間、レールから離れない条件は、においてであることです(不等速円運動を参照)。
Bより、の最小値は、のとき
∴ 求める初速度の大きさの最小値は、 ......[答]
(b) 物体1が半円部ABC上にいるときは、円弧APの長さdは、 ()です。ここでは、物体1の初速度を(1)の結果のと考えるので、Aに,を代入すると、 物体1が直線部CD上にあるとき()は、重力と垂直抗力とのつり合いより、 垂直抗力の大きさをdの関数として図示すると、右図。
(2) Aにおいて、,として、 ∴ 衝突直後の物体1、物体2の速度を,として、運動量保存より、 ・・・C ∴ ......[答] ......[答]
(3) 衝突後、物体1は点Dから半円部DEFの左側に飛び出し、放物運動を行います。床に落下するまでの時間をtとして、等加速度運動の公式より、 ∴
x方向の移動距離HFは、 ......[答]
物体2の位置をQとして、とおきます。点Qにおける物体2の速さをVとします。
(4) 物体2が中心Gに向かう方向に受ける力は、クーロン力,重力の中心方向成分,物体2がレールから受ける大きさの垂直抗力(向きは中心Gから遠ざかる方向)です。 物体2の運動方程式: ・・・D
点Dの位置を位置エネルギーの基準にとると、点Dにおける物体2の力学的エネルギーは、運動エネルギー:のみで、点Qにおける物体2の力学的エネルギーは、運動エネルギー:と位置エネルギー:です。
点Dと点Qとの力学的エネルギー保存より、 ∴ これをDに代入して、 ∴ ・・・E
物体2がD→E→Fと移動する間、レールから離れない条件は、においてであることです。
Eより、の最小値は、のとき
∴ よって、電気量の大きさの最小値は、 ......[答]
(5) クーロン力は物体2の運動方向と垂直な方向に働くので仕事をしません。力学的エネルギー保存より、点Fに達する直前の物体2の運動エネルギーと、点Hに達する直前の物体1の運動エネルギーの総和は、物体1が点Cを通過した瞬間にもっていた運動エネルギーよりも、床を基準とした物体1と物体2の位置エネルギーの分だけ大きくなります。
......[答]
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