京大物理'04年前期[3]

次の文を読んで、  には適した式を、  には正しいものを選びその記号を、それぞれの解答欄に記入せよ。
 図
1に示されたような、長さL,質量mの細い導体棒が、半径a2枚の導体円板PQの縁で円板に対して垂直に固定され、水平に設置された装置がある。2枚の導体円板は、円板の中心を通る導体でできた水平な軸のまわりを摩擦なしで、2枚そろって自由に回転できる。この装置に対して、鉛直下向き方向、あるいは導体棒に対して垂直な水平方向に一様な磁界を加えることができる。ここでは、導体円板の質量、導体棒の太さ、導体棒と軸および円板の電気抵抗、2枚の導体円板の間の空間に生じる電界の影響および導体を流れる電流が作る磁界の影響は、いずれも無視できるものとする。また、重力加速度をgとし、空気による抵抗はないとする。
(1) 1のように、鉛直下向き方向に磁束密度Bの一様な磁界が加わっている。導体棒が最も低い位置にある状態から導体円板を微小角だけ回転させ静かに手を離すと、導体棒は角振動数 あ で単振動し、このとき2枚の導体円板の間に生じる誘導起電力の最大値は い であった。
(2) 2のように、鉛直下向き方向に磁束密度Bの一様な磁界を加え、2枚の導体円板の間に電気抵抗Rの抵抗と起電力Vの電池を直列に接続した。このとき、導体円板に手を添えてゆっくりと回転させ、ある角度で静かに手を離すと、導体棒は静止した。この静止位置は、鉛直下向き方向に対して、 う を満たす角度θ の位置である。この静止位置から、さらに導体円板を微小な角度だけ回転させ静かに手を離すと、導体棒は角度θ の位置を中心にして、しばらくの間振動した。振動の減衰が無視できる場合には、この振動は角振動数 え の単振動で表される。
(3) 3のように、今度は導体棒に対して垂直な水平方向に磁束密度Bの一様な磁界が加わっている。導体棒の位置が鉛直下方から角度だけ回転した状態で静かに手を離すと、導体棒は振動を始めた。ここでは角度は必ずしも微小ではない。また、図のの向きを角度θ の正の向きとし、とする。さらに、導体円板PQの間に生じる起電力は、PからQに向かう向きを正とする。導体棒が、鉛直下方から角度θだけ回転した位置において、角度θ の正の向きに運動しているとき、導体棒の速さは お であり、導体円板の間に生じる起電力は、 か で与えられる。
 導体棒の振動によって生じる起電力の時間的変化の概略を、静かに手を離してから後の導体棒の振動の1周期にわたってグラフで表すと、図4 き のようになる。ただし、図4のそれぞれのグラフの縦軸は起電力を、横軸は時間を表している。
(4) 5のように、2枚の導体円板の間に電気容量Cのコンデンサーと抵抗Rを直列に接続した。導体棒に対して垂直な水平方向に磁束密度Bの一様な磁界を加えた状態で、導体円板を一定の角速度ω で回転させると、2枚の導体円板間に生じる起電力の最大値は く となる。
 ここで、回路を流れる電流が周期的となり、で表されるようになったとして、このIを用いると、抵抗の両端にかかっている電圧は け ,コンデンサーの両端にかかっている電圧は こ と表される。したがって、抵抗とコンデンサーの直列回路の両端にかかっている電圧の最大値は さ ×Iとなる。
以上により回路を流れる電流の最大値
Iが求められる。


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解答 (4)では、交流の発生インピーダンスも参照してください。

(1)() 糸の長さaの単振り子の単振動と考えると、導体棒の単振動の角振動数は、
.......[]
() 導体棒の単振動の振幅は、半径a,頂角に対する円弧の長さと考えられ、
導体棒の速さの最大値は、
導体棒に発生する誘導起電力は導体棒の速さに比例するので、導体棒の速さが最大のときに最大になります。
誘導起電力の最大値は、
......[]

(2)() 磁界が導体棒に流れる電流に及ぼすは、大きさ: (向きは、フレミング左手の法則より右図)
導体棒にはたらくの接線方向の力のつり合いより、
......[]
() F合力を見かけの重力と考えます。

導体棒の単振動の角振動数は、
.......[]
(より、とすることもできます)

(3)() 今度はが微小ではないので、導体棒の運動を単振動と見なすことができません。導体棒の運動を不等速円運動と考え、力学的エネルギー保存則を考えます。
位置エネルギーの基準を最下点にとると、手を離したときの位置エネルギーは、
角度
θ だけ回転した位置において、導体棒の速さvとして運動エネルギー位置エネルギーは、
力学的エネルギー保存より、
......[]
() 導体円板に生じる起電力Vは、速度と磁界のなす角はθ であって、
......[] (起電力については、フレミング右手の法則を参照)

() はじめ、導体棒が最下点に向かって下がってくるとき(で、θ が減少するとき)フレミング右手の法則より、導体棒にQPの向きの起電力が発生します。この起電力は負です。
導体棒が最下点から向こう側に上がっていくとき(で、θ が減少するとき)、導体棒にはPQの向きの起電力が発生します。この起電力は正です。
導体棒が、向こう側から最下点に向かって戻ってくるとき
(で、θ が増加するとき)、導体棒にはQPの向きの起電力が発生します。この起電力は負です。
導体棒が最下点からこちら側に上ってくるとき
(で、θ が増加するとき)、導体棒にはPQの向きの起電力が発生します。この起電力は正です。
導体棒の振動の
1周期にわたって、起電力が、負、正、負、正と変化するグラフは、(f) ......[]

(4)() 等速円運動している導体棒の速さ
フレミング右手の法則より、導体棒が手前側にあるときに、正の起電力が発生し、導体棒が向こう側にいるときに、負の起電力が発生します。起電力が最大になるのは、の位置に来たときです。このとき、速度磁界は垂直で、起電力の最大値は、
......[]

() オームの法則より、抵抗両端の電圧は、 ......[]

() コンデンサー両端にかかっている電圧V,コンデンサーが蓄えている電荷Qとして、
両辺を時間tで微分すると、
ここで、
電流の正の向きが指定されていないので、少々困ります。
起電力の正の向きをPQとしているので、電流の正の向きをPQの方向に電流が流れる向きと考えるのが自然です。コンデンサーの電圧Vの符号は、のときを考えると、正の電流がコンデンサーに流れ込むことによって、コンデンサーCQ側の正電荷P側の負電荷の量が増大して正の電圧を生ずると考えるのが自然です。
よって、コンデンサーの
電流と考えます。

コンデンサーがはじめに放電されていたかどうかも問題文に書かれていないのですが、において、コンデンサーには電荷が蓄えられておらず、電圧ゼロであったと考えるのが自然です。
よって、
.......[]

() 抵抗R電気容量Cのコンデンサーの合成インピーダンスは、
電圧電流の最大値については、オームの法則と同様に考えることができるので、電圧の最大値は、
......[]
抵抗とコンデンサーの電圧を合成して、
 (三角関数の合成を参照)
(
δ は、を満たす角(位相))
と考えることもできます。


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