京大物理'20年前期[2]

次の文章を読んで、に適した式または数値を、それぞれの解答欄に記入せよ。なお、はすでにで与えられたものと同じものを表す。また、問1〜問3では、指示にしたがって、解答をそれぞれの解答欄に記入せよ。ただし、円周率をπとする。

(1) 図1のように、自己インダクタンスLのコイル、スイッチ、電気容量Cのコンデンサーからなる回路がある。コンデンサーに蓄えられる電気量Qとコンデンサーの両端に現れる電圧Vの間にはの関係が成り立つ。コンデンサーに初期の電気量 ()を与え、スイッチを閉じたところ、周期の電気振動が発生した。このとき、図1のコイルを流れる矢印の方向を正とした電流Iについて、微小時間の間の微小変化をとすると、コイルの誘導起電力とコンデンサーの電圧Vの間には
   (i)
の関係がある。スイッチを閉じた後、電流Iは初期値0から負方向に流れ始める。
また、コンデンサーに蓄えられた電気量
Qと電圧Vの微小変化,の間に、の関係がある。電気量Qは電流Iが負の場合は減少し、が成り立つので、微小時間の間の電圧Vの微小変化と電流Iの間には
   (ii)
の関係がある。スイッチを閉じた後、電流Iが負方向に流れ始めるので、電圧Vは初期値から減少し始める。この振動において、VはIに対してだけ位相が遅れる。また、Iの最大値はである。

(2) 図2のように、電圧Eの直流電源、自己インダクタンスLのコイル、スイッチ、抵抗値rの抵抗、ダイオード、電気容量Cのコンデンサーからなる回路がある。ダイオードは理想的な整流作用をもつとし、矢印で示した順方向の抵抗は0、逆方向の抵抗は無限大とする。
十分長い間スイッチを閉じると、コイルの誘導起電力は消滅し、ダイオードには電流が流れなくなる。このときコイルに流れる電流Iはである。次に、時刻にスイッチを開けた。その直後のコイルに流れる電流はである。コンデンサーが、時刻にスイッチを開ける前に電源と等しい電圧Eで充電されていた場合を考える。コンデンサーの両端に現れる電圧VのEからの変化分をとおくと、スイッチを開けた直後のの値は0である。スイッチを開けた後、ダイオードに電流が流れ、コンデンサーが充電されるとともに、は正となり、Iは減少し始める。微小時間の間のIの微小変化,の微小変化の間には
   (iii)
の関係がある。式(iii)は式(i),(ii)と同じ形をしているため、初期値,の電気振動が始まるが、ダイオードが存在するためにIは負にならず、図3のように時刻に振動は停止する。

問1 コイルに蓄えられていた初期のエネルギー、電源から供給されるエネルギー、コンデンサーに蓄積されるエネルギーの関係から時刻におけるコンデンサーの両端に現れる電圧を求め、Vの時間変化を図3と同様に描け。

(3) 図2の回路から抵抗値rの抵抗を取り去り、抵抗値Rの抵抗を加えた図4の回路を、電源と抵抗を直接接続した図5の回路と比較してみよう。ただし、図4の回路ではスイッチを微小時間だけ閉じ、その後微小時間だけ開ける操作を微小時間で周期的にくりかえすものとする。また、微小時間の間のコイルを流れる電流I,コンデンサーの両端に現れる電圧Vの微小変化をそれぞれ,,微小時間の間のI,Vの微小変化をそれぞれ,とする。
スイッチが閉じた状態では、電圧Vを正とするとダイオードに電流は流れず、電源の電圧Eにより電流Iは増加、コンデンサーは抵抗Rを通して放電し
   (iv)
の関係が成立する。スイッチが開いた状態では、電流Iを正とするとダイオードに電流が流れ
   (v)
の関係が成立する。
十分時間がたち、
I,Vが微小時間Tで周期的に変化する定常状態になったときの1周期の間の電流Iの変化は図6のようになった。ただし、スイッチを閉じた瞬間をとし、そのときの電流Iと電圧Vをそれぞれ、,とおく。また、定常状態の,,,は、式(iv),(v)において,を代入することにより、,を用いて表現できるものとする。

問2 定常状態になったときの1周期では,が成り立つ。のとき、電圧,電流をα,E,Rのうち必要なものを用いて表せ。また、の場合の電圧Vの変化を、図6を参考にE,C,R,Tのうち必要なものを用いて描け。

問3 問2で得られたように、図4の回路は電源の電圧Eよりも大きな電圧Vを作り出すことができる。ここで図4と図5の抵抗で消費される電力を考える。コンデンサーの両端に現れる電圧Vは、,がより十分小さいとき、の一定値とみなせる。この場合、のとき、図4の抵抗で消費される電力は図5の抵抗で消費される電力の何倍になるか、αを用いて答えよ。


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解答 昇圧チョッパ回路と呼ばれる実用回路を扱った問題です。問題文中にヒントが書かれているので、問題文をよく読んで解答しましょう。

(1)(イ) 電流の流れる経路に沿って、起電力はなく、電圧降下は、コイルで,コンデンサーでV,キルヒホッフの第2法則より電圧降下の和は0,
よって、 ......[答] (コイルを誘導起電力と考えれば、となります)
(ロ) , (コンデンサーを参照)より、 ......[答]
(ハ) 電気振動において、(イ)の結果より、電流Iが0から負方向に流れて最小値になるとき、は負の最小値から増加して0になり、電圧Vは最大値から減少して0になります。よって、VはIに対して周期遅れます(振動の1周期は、0から増大して最大値までが周期、最大値から減少して0までが周期、0から減少して最小値までが周期、最小値から増大して0までが周期)。位相の遅れは ......[答]
図1の振動回路で、とすると、
となるので、VはIに対してだけ位相が遅れる、と考えることもできます。
(ニ) コイルの電流が最大値のときと、コンデンサーの電荷が最大のときとのエネルギー保存より(振動回路を参照)、
 ∴ ......[答]

(2)(ホ) 十分長い時間スイッチを閉じると、コイルの誘導起電力は消滅し(コイルは導線と同じ、コイルの過渡現象を参照)、ダイオードには電流が流れなくなるのですが、このときの回路は、電池Eに抵抗rが接続されているものと等価です。コイルに流れる電流はオームの法則より、 ......[答]
(ヘ) スイッチを開いた後、電流の流れる経路に沿って、電圧降下は、コイルのとコンデンサー両端の電圧V,起電力はE,キルヒホッフの第2法則より、
 ∴ ......[答] (問題文中の,I減少の記述に注意)
(ト) Eは定数なので、(ロ)と同様に、 ......[答]
(チ) 図3のにおけるIの変化は電気振動の周期を示しています。よって、
......[答]

問1 コイルに蓄えられていた初期のエネルギーは,スイッチを開く前にコンデンサーは電圧Eで充電されていたので、コンデンサーが時刻に蓄えていた電気量はです。時刻におけるコンデンサー両端の電圧をとすると、このときのコンデンサーの電気量はで、電源が供給した電気量は,電源が供給したエネルギーはです。コンデンサーの時刻における静電エネルギーは,時刻における静電エネルギーはです。これらの間のエネルギー保存(振動回路を参照)より、

 (2次方程式を参照)
∴
(
ホ)より、,また問題文にある通り、コンデンサーが充電されて、となるので、
......[答]
Vの時間変化のグラフは右図。

(3) ここでは、,はの間の変化量、,はの間の変化量であって、,,,がある瞬間における電流、電圧の値、と勘違いしないように注意します。
(リ) スイッチが閉じた状態でのとき、ダイオードの左右は別々に動作し、キルヒホッフ第2法則より、 ......[答]
(ヌ) オームの法則より、の間のコンデンサーの電気量の減少分が電流になるので、
......[答]
(ル) スイッチが開いた状態で、電流が流れる経路に沿って、起電力はE,電圧降下はコイルで,並列接続されたコンデンサーと抵抗でV,キルヒホッフの第2法則より、
 ∴ .....[答]
(ヲ) 時間の間に、ダイオードを通して流れ込んだ電流Iは、コンデンサーに流れ込んで電気量を増やす分のと抵抗を流れる電流の和になるので、
 ∴ ......[答]

問2 問題文中の式(iv)(リ)より、,式(v)(ル)でとして(問題文の記述より、におけるVは、におけるに一致)、,より、
∴ ......[答] ・・・�@
式
(iv)(ヌ)で (において)として、 ・・・�A
式
(v)(ヲ)でにおいて、,として、
より、
�@を用いて、
......[答]
注.上記で、時刻における電流、電圧は、(),()です。
のとき、�@より、,�Aとより、,のとき、�Aより、
電圧Vの変化は右図。

問3 図5では、抵抗で消費される電力は、 ・・・�B
図4では、抵抗で消費される電力は問2のの結果を用いて、
 ・・・�C
よって、�Cは�Bの倍 ......[答]



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