量子力学の基礎
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1924年ド・ブロイによって提唱された「物質波」の概念に基づき、シュレーディンガーによって構築された「量子力学」とはどんなものか、ニュートンの古典力学とどう違うのか、体験してみましょう。なお、ここでは、指数関数を、指数がややこしい形になることが多いので、と書きます。です。
古典力学で、速度vで運動する粒子のエネルギーは、
です。速度を使わずに運動量を用いて書くと、
・・・@ 物質波で見たように、粒子には物質としての側面と波動としての側面があります。電子1個では粒子として行動しますが、多数の電子を二重スリットに送ると干渉縞を作り、波動性を示します。この波動性は、電子1個が波動になっているということではなく、電子1個の行動が確率に支配されているという意味で、電子の存在確率が波動になっています。
1次元の波動は、波動方程式、
・・・A によって記述できます(偏微分を参照)。cは波の伝播速度です。この偏微分方程式の解は、例えば、α,βを定数として、
・・・B という形の関数をAに代入してみると、
となるのでAを満たし、BがAの解になっていることがわかります。
境界条件:
初期条件: を課すと、例えば、
(n,Nは整数) が、条件及びAを満たしますが、波長は,周期は,これを用いて、
・・・C Aに代入すると、
これより、となっています(波の公式を参照)。ですが、ド・ブロイの公式より、, (h:プランクの定数,ν:振動数)
これを@:に代入すると、,より、ということになり、粒子としての関係式@を満たせなくなってしまいます。
そこで、Aを満たす解を、複素数を用いて記述し、
としてみます(,:角振動数,:波数)。
Eを,
Fを,
のように見ると、とするためには、
, ・・・G (がよく出てくるので、としています。はディラック定数と呼ばれています)
とすると、が満たされることになります。
粒子の物質波が満たす波動関数ϕが従うべき方程式は、@でGの変換を施した、
ということになります。これを1次元のシュレーディンガー方程式と言います。複素数で波動関数ϕを扱い、が微小体積中に電子が存在する確率と考えます。が確率密度関数です(正規分布を参照)。
3次元の場合には、
となりますが、ラプラス演算子:を用いて、
と書くことができます。Gのは、として、と書けます。運動エネルギーに加えて位置エネルギーが存在する場合には、シュレーディンガー方程式は、
・・・H となります。ここで、仮にϕがのみの関数,t のみの関数の積として、の形に書ける(変数分離と言います)として、Hに代入すると、
で両辺を割ると、
左辺はtのみの関数、右辺はのみの関数です。これが等しくなるためには定数であることが必要です。この定数をEとおくと、偏微分は通常の微分となり、
よって、とおいて、
これより、
となりますが、は、偏微分方程式:
・・・I に従います。Hを時間を含むシュレーディンガー方程式、Iを時間を含まないシュレーディンガー方程式と言います。
の代わりにと書いたものを運動量演算子と言います。左辺のをハミルトニアン(エネルギー演算子)と言います。演算子Aを関数ϕに作用させ、という微分方程式を解いて定数aが求められるとき、aを演算子Aの固有値と言います。また、その時の解ϕを固有値aに対する固有関数と言います。
ここでは、時間を含まないシュレーディンガー方程式について考えます。
まず、一次元のシュレーディンガー方程式を考えます。右図のような高さのポテンシャル障壁の問題を考えてみましょう。
(), (), ()
として、x軸負方向から粒子が入射する状況を考えます。
,とおくと、シュレーディンガー方程式Iは、
,において、, ・・・J
において、, ・・・K
となります。
におけるJの解を、 ・・・L
におけるKの解を、 ・・・M
におけるJの解を、 ・・・N
とおきます。Lのは電子の入射波、は電子の反射波、Nのは透過波を意味しています。
Lを微分すると、
Mを微分すると、
Nを微分すると、
において、とが連続なので、,
において、とが連続なので、,
これらを解くと、
ここで、はから進入してくる入射波の振幅、は反射波の振幅、は透過波の振幅を表します。
ポテンシャル障壁を粒子が透過する確率は、で表され、より、
()
となる粒子でも、にも粒子の存在確率が出てくることがわかります。ポテンシャル障壁を越えるのに必要なエネルギーを持っていないのにもかかわらず、この障壁を越えてしまう粒子がある、という現象をトンネル効果と言いいます。
のときは、となり、透過率はほぼ1、つまり粒子はほぼ全数透過してしまいます。のとき、なので、障壁の高さが高いと粒子は障壁を越えられなくなります。
量子力学の基礎(その2)につづく。
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