電磁場テンソル


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物理法則は全ての座標系において共変であるべき、というアインシュタインによる相対性の要請(計量テンソルを参照)により、マクスウェルの方程式も座標変換に対して共変であるべきです。共変であるかどうかを調べるために、マクスウェルの方程式をテンソルを用いて表現することを考えます。

空間内の各点において、
電界磁界,誘電率をε,透磁率をμとして、電束密度磁束密度,また、電荷密度ρ電流密度として、
マクスウエルの方程式
 ・・・@ 
 ・・・A 
 ・・・B 
 ・・・C 
及び、@とBより導かれる、電荷保存の式:
 ・・・D
また、スカラー・ポテンシャルϕベクトル・ポテンシャルより磁界電界を求める式、
 E
適当な関数
χを用いたゲージ変換
 ・・・F
以上を、テンソルを用いて4元表示することを考えます。以上については、ゲージ変換を参照してください。

ベクトル・ポテンシャルを拡張し、
ϕを含めて、4元ベクトルを考えます。これを、と書き、4元ベクトル・ポテンシャルと言います。λは、を表し、です。A2乗、3乗という意味ではなく、の第2成分、第3成分という意味です。反変ベクトルです。これに対して、計量テンソルを用いて、共変ベクトル
として定めます。ローレンツ変換によって座標変換を行うミンコフスキー時空においては、計量テンソルは、
です。

ここで、
偏微分と書き、4元ベクトルポテンシャルを用いて、電磁場テンソル
 ・・・G
を定義します。E,Gより、電界磁界は、

Gより、は添字λνの入れ替えに対して、反対称()なので、
となります。

マクスウェルの方程式のAとCは、

 ・・・H
という形にまとめられます。Hは、一見してλνσがそれぞれ、01234通りの値をとり、通りの式を表すように見えますが、λνσのうちに等しいものがあると、例えば、だとすると、であり、また、
であって、Hの左辺は恒等的に0です(が反対称テンソルだからです)。Hの左辺で意味があるのは、λνσが相異なるときだけです。Hはλνσについて対称なので、λνσが循環的入れ替わったものは同じ式になります。よって、Hは、実質的に
4通りの場合に異なる方程式になります。Hは、それぞれ、
のとき、

のとき、
のとき、
この3つの式でマクスウェルの方程式のCを与えます。
のとき、

これは、マクスウェルの方程式のAです。

電荷密度を
ρ,電流ベクトルをとして、4元電流密度をとし、共変テンソルから反変テンソルを、
として作ります。例えば、であって、のときのみのときのみで、のようになっています。
これを用いて、マクスウェルの方程式の@とBは、

 ・・・I
と表せます。のとき、Iは、
より、,これはマクスウェルの方程式の@です。
のとき、Iは、


,つまり、
のとき、Iは、

,つまり、
のとき、Iは、

,つまり、
以上の3式を合わせて、,これはマクスウェルの方程式のBです。
以上より、マクスウェルの方程式@〜Cは、次の
2式にまとめられます。
 ・・・H
 ・・・I

電荷保存の式:は、4元ベクトルで書くと、
即ち、 ・・・J という形になります。
Iを用いても、両辺をで微分し
λについて和をとると、
この右辺は、λνについて対称な形をしており、,また、が反対称テンソルであることを考えると、0になります。つまり、JはIからも導けます。

マクスウェルの方程式H,Iが
ローレンツ変換を受けるとどうなるかを考えます。K系の座標系の座標のローレンツ変換を表すテンソルを、のように見ると、K系の電磁場テンソルにローレンツ変換を行うと、系では、
 ・・・K
となります。
Kの両辺をで微分すると、

ローレンツ変換では、も逆変換のも各成分は、1次関数か、もしくは定数なので、は定数で、です。よって、のみに働き、連鎖定理を使って、
 ・・・L
Lで、とすると、
 ・・・M
さらに、Mで、とすると、
 ・・・N
L+M+Nにより、
よって、H:であれば、であって、Hは、ローレンツ変換をしても形を変えません。
K系の電流密度ベクトルはローレンツ変換により、に変換され、電磁場テンソルは、ローレンツ変換により、に変換されます。これをで微分すると、
Iも、ローレンツ変換により形を変えないことがわかります。
つまり、マクスウェルの方程式は、ローレンツ変換により形を変えないことがわかります。即ち電磁波の
伝播速度即ち真空中の光速はどの座標系においても変わらない、ということです。

ローレンツ・ゲージ即ちは、4元ポテンシャルを用いてと表せるので、ローレンツ変換により形を変えません。ローレンツ・ゲージを選んだ場合のポテンシャルϕが満たすべき方程式は、
 ・・・O
 ・・・P
4元表示すると、と表されるので、やはりローレンツ変換により形を変えません。
注.クーロン・ゲージは、テンソル形式で表現できず、ローレンツ変換を施すと形を変えてしまいます。
以上の流れを見ていると、物理法則をテンソルを使って表現できれば、ローレンツ変換に対して共変である、ということが言えそうです。



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