東大物理 '06 年前期 [1] 太陽系以外で、恒星の周りを公転する惑星が初めて発見されたのは 1995 年である。以来、すでに 150 個以上の太陽系外惑星が発見されている。この太陽系外惑星の検出原理は、質量 M の恒星と質量 m の惑星 ( ) が、互いの万有引力だけによってそれぞれ運動している場合を考えれば理解できる。この場合、惑星は一般には楕円軌道上を運動することが知られている。しかしここでは図 1 に示すように、惑星がある定点 C を中心とした半径 a の円周上を等速円運動しているとする ( だたし、図 1 には恒星を図示していないことに注意 ) 。万有引力定数を G とし、恒星および惑星の大きさは無視する。 T 図 1 のように、惑星が反時計回りに公転しているものとする。惑星に働く向心力は恒星による万有引力であることを考えて、以下の問に答えよ。 (1) 恒星、惑星、点 C の互いの位置関係を理由とともに述べよ。
(2) 恒星と点 C との距離、惑星の速さ v ,恒星の速さ V を求めよ。
(3) 惑星の公転軌道面上において、 a に比べて充分に遠方にあり、点 C に対して静止している観測者を考える。図 1 のように惑星が角度 θ [rad] の位置にあるとき、惑星の速度の視線方向成分 を、 v と θ を用いて表せ。ただし、観測者に対して遠ざかる向きを の正の向きに選ぶものとする。 (4) 時刻 において、惑星が の位置にあったとする。また、惑星の公転周期を T ,恒星の速度の視線方向成分を とする。 と を t の関数として、その概形を の範囲でグラフに描け。ただし、観測者に対して遠ざかる向きを と の正の向きに選ぶものとする。 U 惑星からの光は弱すぎて観測することは困難である。しかし、恒星からの光を観測することによって、惑星の存在を知ることができる。この間接的な惑星検出の方法では、運動する恒星が発する光の波長は、音源が動いた場合の音の波長と同様に、ドップラー効果によって変化することを利用する。ここでは、恒星が静止している場合には波長 の光を発するものとして以下の問に答えよ。 (1) 惑星が角度 θ の位置にあるときに恒星が発する光を観測者が測定したところ、波長は λ であった。光速度を c として、波長の変化量 を θ の関数として求めよ。 (2) II(1) で求めた は時間変動する。 の範囲で の最大値が 以上であれば、現在の観測技術で の時間変動を検出することができる。このことから、惑星の存在を知ることが可能であるために a が満たすべき条件式を求めよ。 【広告】ここから広告です。ご覧の皆さまのご支援ご理解を賜りたく、よろしくお願いいたします。
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解答 天文学の最前線の話題を問題にしている点では興味深い問題ですが、T (1) は、もともと高校の範囲では解答不能な問題を無理に入試問題に焼き直しているために、問題文が不適切であるように思います。受験生としては、高校の範囲として勉強してきた条件下で考え、以下のような詳細な検討を省略して直観的に解答してよいと思われます。 T (1) 点 C から見たときの、惑星、恒星の 加速度 を α , β とし、恒星の位置 P から惑星の位置 Q までの 距離 を r とします ( 問題文にあるように、恒星は点 C に位置するのではなく、恒星と惑星の 距離 も a ではないことに注意 ) 。恒星と惑星の間には、 大きさ の 万有引力 が働きます。 惑星に働く 力 は 方向に働くので、 方向での惑星の 運動方程式 は、 ・・・@ 恒星に働く 力 は 方向に働くので、 方向での恒星の運動方程式は、 ・・・A @+Aより、 ( これは、系に 外力 が働いておらず 運動量 の変化が 0 で、 運動量が保存 されることを意味します ) これより、惑星と恒星の 重心 R の 位置 : を時間 t で 2 回微分すると、 よって、惑星と恒星の重心 R は、等速直線運動を行うか静止することになります ( 等加速度運動 を参照 ) 。 C から見て、惑星と恒星の重心 R が等速直線運動 をすると、いずれは、 R は C からどんどん離れていく ことになるので、惑星の運動が C を中心とする 等速円運動 になり得ません。従って、重心 R は C から見て静止 しています。 ×@− ×Aを作ると、 両辺を で割り、 をかけると、 ・・・B は、恒星 P から見た惑星の 相対加速度 を表します ( 相対運動 を参照 ) が、B式は、恒星 P から見たときに、 質量 の惑星が 大きさ の 万有引力 を受けて運動する形をしているので、恒星 P から見て、惑星は P を焦点とする楕円軌道を描きながら運動します。 惑星 Q は、 C を中心とする 半径 a の円周上に位置するので、 です。また、 より、 ,よって、 ∴ は定ベクトルなので、 は定点であり、これは、 を中心とする 半径 の円を表します。恒星も円運動 しています。重心 R は、両円の中心を結ぶ線分 を M : m に内分する点です。 惑星の運動は 等速円運動 ですが、このためには、惑星は一定の大きさの向心力を受ける ことになります。ということは、@式の は一定値であって、恒星と惑星の 距離 r は一定です。 より、 これが一定であるためには、 より、 点 C と重心 R が一致 し、
・・・C,つまり、点
C が線分 PQ を m : M に内分する点でなければなりません。 以上より、 惑星と恒星、定点 C の位置関係:恒星と惑星と点 C は一直線上にあって、恒星と惑星を結ぶ線分を m : M に内分する点 ( 両者の重心 ) が点 C となる。 ......[ 答 ] 理由:惑星と恒星を合わせた系に外力が働かず、運動量が変化しない。また、惑星は等速円運動するので系の運動量の和はゼロ。よって、 C から見て、恒星と惑星の重心は移動せず、惑星に一定の万有引力が働くことから、重心は定点 C に一致する。 ......[ 答 ]
(2) 恒星と定点 C との 距離 は、 (1) の結果とCより、 ......[ 答 ] 半径 a の 等速円運動 の 向心加速度 は で、惑星の運動方程式は、 ∴ ......[ 答 ] 恒星の 向心加速度 は で、恒星の運動方程式は、 ∴ ......[ 答 ] ( 惑星と恒星の 運動量 の和が 0 ,つまり、 であることからも求められます ) (3) 充分遠方の観測者と C を結ぶ直線を結ぶ直線 ( 視線方向 ) と、惑星の 速度ベクトル とのなす角は であって、惑星の 速度 の視線方向成分は、右図より、 ......[ 答 ]
(4) (1) より、恒星の 速度 は、惑星の 速度 の向きとちょうど 逆の向きで、恒星の 速度 の視線方向成分は、 と符号が正反対になり、 U (1) 波長 λ , の光の 振動数 は , です。光源の近づく方向の 速度成分 は、 なので、 ドップラー効果の公式 より、 ......[ 答 ]
∴ ......[ 答 ]
(3) (2) の結果より、
∴ [s] ......[ 答 ]
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