京大物理'26年前期[3]
次の文章を読んで、 に適した式または数値を、{ }からは適切なものを一つ選びその番号を、それぞれの解答欄に記入せよ。なお、 はすでに で与えられたものと同じものを表す。また、問1〜問3では、指示にしたがって、解答をそれぞれの解答欄に記入せよ。ただし、気体定数をR、単原子分子理想気体の定積モル比熱を
,重力加速度の大きさを
とする。
図1のように、断面積がSで水平な可動壁を持つ固定された容器の中に、nモルの単原子分子理想気体が入っている。質量がmで厚さLの可動壁は、容器内にある上下のストッパーの間を滑らかに動く。上部に設置されたストッパーから測った可動壁上面までの距離をxとする。可動壁が動き得る範囲は、
であり、容器上面から上部ストッパーの間の長さは、2Lである。可動壁を含め、容器の壁は全て断熱材でできており、容器内部には温度調節器が備えられている。温度調節器、ストッパー、容器の壁の厚さや体積は無視できるものとする。また、容器内の気体への重力の影響は無視できるものとする。
(1) 図1では、容器が気圧
の大気圧中にある。温度調節器によって容器内の気体の温度をTに設定したとき、可動壁は、
の範囲にあった。容器内の気体の圧力は気体の状態方程式を用いると、n,R,T,L,S,xを用いて、 あ と与えられる。xは、力のつり合いから、 い となる。さらに温度をゆっくりと上昇させると、可動壁は、温度
で
に達した。温度を上昇させる際に、気体が吸収する熱量は、n,R,T,
を用いると、 う となり、気体が外部にする仕事は、n,R,T,L,S,
,m,
を用いて、 え と求められる。
問1
に達する温度
になった直後に、温度調節器のスイッチを切って、可動壁を鉛直上向きにゆっくりと押し上げる仕事により、
とした。この過程では、
(γは1より大きい定数)が一定になることが知られている。この過程で気体が外部からされる仕事をL,S,
,m,
,γを用いて求めよ。その導出過程も書くこと。
(2) 次に、密度ρの液体中に、容器上面と可動壁の水平を保ったまま、容器を図2のように固定した。液体の量は調節が可能であり、液面の位置を変化させることができる。液面は、上部ストッパーの位置から容器の上面の間に位置し、上部ストッパーから液面までの距離をzとおくと、
の範囲にあるようにする。大気圧は
である。なお、容器下部には液体が通過する穴が空いており、可動壁が動いても液面の位置は変わらないものとする。液面の位置、および可動壁の位置がそれぞれz,xであるとき、液体が可動壁におよぼす圧力は、 お である。
可動壁の位置を固定して考えたとき、液体が可動壁におよぼす圧力が最も小さくなる液面の位置は、
である。液面の位置を
に設定しても、温度(正の絶対温度)を調節することにより、可動壁が上部ストッパーに行きつくことを可能にするためには、可動壁の質量を、m< か にする必要がある。この条件が満たされれば、任意のz (
)に対して、温度を調節することによって可動壁を
の間で移動させることができる。
以下、条件m< か が満たされているものとする。液面の位置を
に設定し、温度調節器で温度を調節したところ、可動壁は、
の範囲にあった。このことから、容器内の温度は、
き より高く、
く より低いことがわかる。容器内の温度を保ったまま液面を
にゆっくり変化させると、可動壁は下降する。さらに
で、温度を け 以下にすれば、可動壁は
まで上昇する。
(3) 図2で、可動壁の質量が
を満たすとき、以下の4つの過程からなるサイクルを考えてみよう。ただし、
と
はこの条件のもとでの き と く の値である。
[過程T] 液面位置を
に固定する。最初、容器内の温度を
、可動壁の位置を
に設定し、それから容器内の温度をゆっくりと
から
まで上昇させる。この過程で可動壁の位置は
から
に移動した。
[過程U] 温度を
に固定して、液面位置をゆっくりと
から
に変化させる。その後、容器内の温度を
からゆっくりと
まで下降させる。この過程では、可動壁の位置は変わらず、
のままであった。なお、温度を
よりも低くすると、可動壁の位置は
に移動する。
[過程V] 液面位置を
に固定し、温度を
からさらに下降させて、
とすると、可動壁の位置は
に達した。
[過程W] 温度を
に固定して、液面位置を
から
にゆっくりと変化させる。その後、容器内の温度を
からゆっくりと
に変化させる。
問2 図3を解答欄に描き写し、このサイクルにおける容器内の気体の圧力Pと可動壁の位置xの関係をグラフに示せ。各過程がどの線上に位置するかを書き込み、状態変化の向きを示す矢印も記入せよ。また、過程Tでの始点と終点の圧力をそれぞれ
,
とし、過程Vでの始点と終点の圧力をそれぞれ
,
としたとき、それらの値をρ,
,Lを用いて記せ。過程T,U,V,Wで気体が外部にする仕事をそれぞれ、
,
,
,
とおき、これらをρ,
,L,Sのうち必要なものを用いて表すと、
こ ,
さ ,
し ,
す と求まる。また、吸熱する過程は、{せ:@過程T,A過程U,B過程V,C過程W,D過程Tと過程U,E過程Tと過程V,F過程Tと過程W,G過程Uと過程V,H過程Uと過程W,I過程Vと過程W}である。
問3 吸熱する過程での全吸熱量と気体が外部にする正味の仕事を求め、また、このサイクルの熱効率を求めよ。
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解答 浮力を考慮しつつ、状態変化を考える問題ですが、問題文の筋書き通りに考察すると、[か]から[け]のあたりでは、以下のようにやや複雑になります。最初からz,xの値を0,Lなどとして、その状態での状態方程式、浮力とのつり合いを考えて空欄を埋める方が取り組みやすいかも知れません。(3)の問2以後はやるべきことも多く、迅速に進める必要があります。
(1) 容器内の気体の圧力をpとして、容器内の気体について、状態方程式:
∴
......[あ]
・・・@[あ]より、
温度が上昇する過程で可動壁にかかる力のつり合いが成立するので、気体は定圧変化をします。定圧モル比熱の式より、温度T→
のとき気体が吸収する熱量Qは、
......[う]
......[え]
問1 温度調節器のスイッチを切ると、気体は断熱変化をして、温度が
から
まで変化するとします。このとき、気体の体積は
から
まで変化するので、問題文より、
∴ 
,温度が
のときの気体の状態方程式:よって、@を用いて、
......[答]
(2) 液体が可動壁に及ぼす圧力(浮力を参照)、即ち、可動壁の下面の高さでの液体の圧力は、大気圧と液体の面積当たりの重力の和として、
......[お] これより、液体が可動壁に及ぼす力は、
,これと、体積
の容器内の気体が可動壁に及ぼす力と可動壁に働く重力の合力がつり合うので、容器内の気体の圧力をpとして、
・・・A容器内の気体(温度をTとします)の状態方程式:
・・・BA,Bより、
・・・CCは、
であり、かつ、可動壁が上部ストッパーに行きつく
では、
・・・D
より、
・・・E
......[か]
注.このとき、Cは、
とおくと、
において
は単調増加で、
,
,
のとき、
,
,
より、
,従って、
において
,
であり、温度Tを調節することにより、C,
を満たすxを取ることができます。
のときCは、となり、
2次関数
の軸の位置は、
ですが、[か]、即ちEを用いると、 なので、aの範囲
は、軸よりも右側にあり、この範囲で
は単調増加です。よって、
であり、 より、
よって、
......[き],
......[く]
かつ
のとき、Dより、
......[け]この温度以下にすると、上側のストッパーと可動壁の間に抗力が生じます。
(3)
のとき、Cは、
,つまり、
・・・Fとなります。[く]の
,[け]の
は、
・・・G
・・・Hとなります。また、各時点での温度をTとして、状態方程式B:
は、
のとき、
,
のとき、
となります。 [過程T]
,
のときの容器内の気体の圧力
は、G,状態方程式Bより、
,
のときの容器内の気体の圧力
は、H,状態方程式Bより、
固定で、x:0→Lの間の温度Tは、Fより、状態方程式Bより、この間の圧力Pは、
つまり、過程TにおけるP-xグラフは、傾き
,P切片
の直線です。 [過程U] 温度を
に固定して、液面位置を
から
に変化させると、可動壁を押し下げようとする力が押し上げようとする力よりも強くなり、ストッパーにより可動壁が
で止まっている状態になります。ここで温度を
に下げると、再び押し下げようとする力が押し上げようとする力と等しくなります(ストッパーの抗力は0)。
∴
・・・Iこの状態における気体の圧力、即ち過程Vでの始点の気体の圧力
は、状態方程式Bより、
(
)過程UにおけるP-xグラフは直線
の
の部分です。 [過程V]
,
となったときの温度
は、Fより([け]を利用することもできます)、
∴
・・・Jこのときの容器内の気体の圧力
は、状態方程式Bより、
固定で、x:L→0の間の温度Tは、Fより、状態方程式Bより、この間の圧力Pは、
つまり、過程VにおけるP-xグラフは傾き
,P切片
の直線です。 [過程W] 温度を
に固定して、液面位置を
から
に変化させると、可動壁を押し上げようとする力が押し下げようとする力よりも強くなり、ストッパーにより可動壁が
で止まっている状態になります。ここで温度を
に上げると、再び押し上げようとする力と押し下げようとする力が等しくなります(ストッパーの抗力は0)。 この過程において、圧力は
から
に変化します。過程WにおけるP-xグラフは、直線
の
の部分です。
問2 上記より、このサイクルにおける容器内の気体の圧力Pと可動壁の位置xの関係をグラフに表すと、右図。
p-Vグラフと横軸で囲む部分の面積が気体のした仕事になるので、各過程について、P-xグラフとと横軸で囲む部分の面積にSをかけたものが気体のした仕事になります。
問2の図における面積を考え、
......[こ]
......[さ]
......[し]
......[す]G,H,I,Jより、過程T,過程U,過程V,過程Wにおける内部エネルギーの変化
,
,
,
は、 よって、過程T,過程U,過程V,過程Wにおいて、気体が吸収した熱量
,
,
,
は、熱力学第一法則より、
,
,
,
より、気体が熱を吸収した過程は、過程T,過程Wです。 F ......[せ]
問3 吸熱する過程での全吸熱量
は、
......[答]気体が外部にする正味の仕事
は、
......[答]
......[答]
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各問題の著作権は
出題大学に属します。なお、解答は、
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