東工大物理'20年前期[1]
図のように、2つの斜面AB(床に対する傾斜角θ),EF(長さL,床に対する傾斜角θ)と水平な面CD(長さ)を、2つの円弧面BC(中心点G,半径R),DE(中心点,半径R)でなめらかにつなげた台P (質量M)が水平な床の上に置かれている。この台P上に置かれた大きさの無視できる物体Q (質量m)が、面に沿って摩擦なしに運動する。ただし、斜面ABの長さはLより長く、物体Qは台Pの端点Fに達したときには、台Pから離れることができるとする。また、台P,物体Qはいずれも図の奥行き方向には移動しないものとする。水平方向にx軸を、鉛直方向にy軸をとり、それぞれ図の右向き、上向きを正とする。空気抵抗は無視できるとし、重力加速度の大きさをとして、以下の問に答えよ。
[A] 台Pが床に固定されている場合を考える。
(a) 斜面AB上で面CDに対して高さhの場所に物体Qを置いて初速度なしに放した。物体Qが初めて点Dに達したときの物体Qの床に対する速度のx成分を求めよ。
(b) 問(a)において、hがある値より大きいとき、物体Qは端点Fに達して台Pから離れるが、hがより小さいとき、物体Qは台Pから離れない。このようなをm,M,,,R,θのうち必要なものを用いて表せ。
(c) 問(a)において、hがより大きいとき、物体Qは端点Fに達した後、台Pから離れる。物体Qが端点Fを離れてから最高点に達するまでの時間を、m,M,,h,,θのうち必要なものを用いて表せ。
(d) 円弧面BC上の点に物体Qを置いて初速度なしに放したところ、物体Qは面CD上を移動し、円弧面DE上の点に達した後、そこから滑り降りて再び点に戻る周期運動を行った。この運動の周期について述べた次の文章において、空欄(ア)〜(エ)に当てはまる数式を答えよ。ただし、線分が線分CGとなす角は十分に小さく、物体Qの円弧面上の運動は単振動と見なせるものとし、必要なら,の近似式を用いてよい。
物体Qが点から初めて点Cに達するまでの時間はである。また、点Cに達したときの物体Qの速さはに比例した式で表すことができる。このことから、物体Qが点Cから初めて点Dに達するまでの時間はと表せる。したがって、この運動の周期はである。
[B] 台Pが床から離れることなく摩擦なしにx方向に移動できる場合を考える。
(e) 台Pが床に対して静止しているとき、斜面AB上で面CDに対して高さhの場所に物体Qを置いて初速度なしに放した。物体Qが初めて点Dに達したときの物体Qおよび台Pの床に対する速度のx成分,をそれぞれ求めよ。
(f) 問(e)において、hがある値より大きいとき、物体Qは端点Fに達して台Pから離れるが、hがより小さいとき、物体Qは台Pから離れない。このようなをm,M,,,R,θのうち必要なものを用いて表せ。
(g) 問(e)において、hがより大きいとき、物体Qは端点Fに達した後、台Pから離れる。この瞬間の台Pの床に対する速度のx成分について述べた次の文章において、空欄(オ),(カ)に当てはまる数式を答えよ、 物体Qが台Pから離れる瞬間における物体Qの床に対する速度のx成分およびy成分をそれぞれ,とすると、物体Qが斜面EF上を運動していたことから、,,の間には斜面EFの傾斜角θで決まる関係式が成り立つ。この式と、力学的エネルギー保存則および運動量保存則を連立して解くと、と表される。
[C] 物体Qの置かれた台Pが常にx方向に加速度a ()の等加速度運動を行うように、台Pに適切な外力Tを加える場合を考える。台Pは、床から離れることなく摩擦なしにx軸の正の向きに運動するものとする。
(h) 円弧面BC上にある物体Qが、点B,Cを超えることなく台Pから見て単振動と見なせる十分に振幅の小さな周期運動を行った。この運動の周期を求めよ。
(i) 次に、斜面AB上に物体Qが置かれた状況を考える。台Pを床に対して距離sだけ移動させている間、物体Qは斜面AB上で運動していた。この間に外力Tが行った仕事の大きさをm,M,,s,θ,aを用いて表せ。
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解答 ほぼ頻出タイプの標準問題ですが、ところどころ丁寧に考察すべき点があります。
∴ ......[答]
(b) ,つまり、物体Qが端点Fでちょうど停止する分かれ目の状況を考えます。点B,Eの面CDからの高さは、 点Fの面CDからの高さは、,物体Qの点Fにおける位置エネルギーは,運動エネルギーは0,放された点での位置エネルギーは,運動エネルギーは0,力学的エネルギー保存より、 ∴ ......[答] この結果は、点Fと同じ高さのところで物体Qを放すと、ちょうど端点Fで物体Qが停止することを意味しています。
(c) のとき、端点Fにおける物体Qの速さをとすると、この点での運動エネルギーは,力学的エネルギー保存より、 ∴ 物体Qの台Pから離れた直後の速度のy成分は,求める時間をt として、y方向について、等加速度運動の公式より、 ∴ ......[答]
(d)(ア) 物体Qが円弧面DE上の点まで行って引き返すとします。のCD面からの高さは、力学的エネルギー保存より、のCD面からの高さと同じです。周期運動のうち、,,,をつないだ運動は、が微小であることから、ひもの長さRの単振り子の単振動の1周期分と考えると、その周期はです。物体Qがから初めてCに達するまでの時間は周期ので、 ......[答]
(イ) 点Cに達したときの物体Qの速さをとすると、物体Qの点における位置エネルギーは,点Cにおける運動エネルギーは,力学的エネルギー保存より、 と近似すると、 ∴ ......[答]
(ウ) CD間は等速度運動するので、点Cから初めてDに達するまでの時間は、
......[答]
(エ) 運動全体の周期は、単振り子の周期にCDを往復する時間を加えて、
......[答]
[B](e) 放された点で物体Qの位置エネルギーは,運動エネルギーは、物体Q,台Pとも0,運動量も0,物体Qが点Dに達した時点で、物体Qの位置エネルギーは0,運動エネルギーは、物体Qが,台Pが,両地点での台Pの位置エネルギーに変化はなく、力学的エネルギー保存より、 ・・・@ ∴ ・・・A @に代入して、
Aより、 ......[答]
(f) (b)同様、,つまり、物体Qが端点Fでちょうど停止する分かれ目の状況を考えます。物体Qが放されたとき、位置エネルギーは,速度は物体Q,台Pとも0です。物体Qが端点Fに達したとき、物体Qが台Pに対して静止する、ということは、物体Qと台Pの速度が一致して同じ値になるということです。この速度をとします。両地点でのx方向の運動量保存より、 ∴ 両地点で台Pの位置エネルギーに変化はなく、端点Fでの物体Qの力学的エネルギーは位置エネルギーののみで、力学的エネルギー保存より、 ∴ ......[答] この結果は(b)と同じですが、台Pが動く場合でも、端点Fと同じ高さの所から物体Qを放すとちょうど端点Fで停止する、ということを意味しています。
(g)(オ) 台P上で見て、物体Qが斜面に沿って運動してきて端点Fから飛び出す瞬間に、台P上で見た物体Qの相対速度のx成分は、 (に注意),y成分は,これらの関係は右図のようになり、 ......[答] ・・・B
(カ) のとき、物体Qが放されたときの位置エネルギーは,運動エネルギーは物体Q,台Pとも0,運動量も物体Q,台Pとも0,物体Qが端点Fから飛び出す瞬間に、物体Qの位置エネルギーは,運動エネルギーは物体Qが,台Pが,両地点で台Pの位置エネルギーに変化はなく、力学的エネルギー保存より、 ・・・C x方向の運動量保存より、
これとEをDに代入し、
なので、 ......[答]
[C](h) ひもの長さRの単振り子の周期:において、重力加速度を見かけの重力加速度として(慣性力を参照)、 ......[答]
(i) もちろん、仕事はなのですが、Tを使わずに答えるので、Tを求める必要があります。台Pがx方向に受ける力は、外力T,物体Qから斜面が受ける垂直抗力Nのx方向成分です。台Pのx方向の運動方程式: ・・・E 台P上で見て、物体Qが斜面と垂直な方向に受ける力は、斜面から受ける垂直抗力N,鉛直下向きの重力の斜面と垂直な方向の成分,x軸負方向の慣性力の斜面と垂直な方向の成分です。これらの力のつり合い: これより、,これをEに代入して、 よって、求める仕事は、 ......[答]
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