東工大物理'21年前期[2]
[A] 図1のように、真空中に2枚の薄い正方形の極板が水平に保たれて向かい合う平行板コンデンサーがある。極板の1辺の長さをa,2枚の極板のの間隔をとする。また、図2はこの極板間に帯電していない誘電体の板を極板と平行に挿入したものである。誘電体は底面が1辺の長さaの正方形、高さがdの直方体であり、誘電体と上下の極板との間隔をdとする。誘電体の比誘電率を (),真空の誘電率をとする。極板の間隔はaに比べて十分小さく、極板端部や誘電体端部における電場の乱れは無視できるものとする。以下の問に答えよ。
(a) 図1,図2のコンデンサーの電気容量をそれぞれ,とする。およびを、a,d,,のうち必要なものを用いて表せ。
(b) 図1および図2のコンデンサーの極板間に0でない電位差を与えると、図1の極板間、図2の上側極板と誘電体の間、および誘電体中には、それぞれ一様とみなすことのできる電場が生じる。それらの電場の強さをそれぞれ,,およびとする。,,の大小関係を不等式 の形で答えよ。
[B] 図3のように、図1の水平に置かれた平行板コンデンサーの極板間に誘電体の板を挿入した。このコンデンサーの両極板にスイッチおよび起電力の直流電源をつないだ。x軸をこれらの極板のある1辺と平行にとり、両極板がに存在するように原点を定める。誘電体は底面が1辺の長さの正方形、高さがdの直方体であり、帯電していない。誘電体の比誘電率を (),質量をmとする。鉛直上方から極板と誘電体の位置関係を見ると、図4のように、極板の各辺に対し、誘電体の4辺はの角度をなしている。両極板が固定されているのに対し、誘電体は各極板を含む平面との間隔をdに保ちながら向きを変えることなくx方向にのみなめらかに動くことができる。誘電体の位置をその左端のx座標で表す。以下の問に答えよ。 なお、極板、スイッチ、導線の抵抗および電源の内部抵抗、回路の自己インダクタンス、電荷の移動に伴い放射される電磁波の影響、誘電体の分極の変化に伴う発熱は無視できるものとする。また、誘電体の移動に伴う極板上の電荷の再配置や誘電体の分極は十分速やかに起こるものとする。極板の間隔はaに比べて十分小さく、極板端部や誘電体端部における電場の乱れは無視できるものとする。
(c) 次の文章の空欄(ア)〜(オ)に当てはまる数式を答えよ。
誘電体の位置xが変化すると、極板の面積S (ただし)のうち誘電体が挿入された部分の面積が変化する。これをxの関数としてと表す。その結果、コンデンサーの電気容量もxの関数として変化する。これをと表せば、問(b)で定義されたとおよびS,を用いて次のように表される。 図4を参考に面積を求めれば、 となる。したがって、は次式の形で与えられる。 , と表される。また、bはd,,を用いて次式で表される。
(d) 最初、誘電体は位置にあり、スイッチは閉じられているとする。その後、スイッチを開いてから誘電体の位置xを動かすと、コンデンサーに蓄えられる静電エネルギーはxの関数として変化する。これをと表すとき、をの範囲で、x,および問(c)で定義された,bを用いて表せ。
(e) スイッチを閉じた状態で誘電体の位置xを動かすと、コンデンサーに蓄えられる静電エネルギーはxの関数として変化する。これをと表すとき、をの範囲で、x,および問(c)で定義された,bを用いて表せ。
(f) スイッチを閉じた状態で考える。誘電体の位置xを動かすと上側極板の電荷もxに応じて変化する。誘電体に外力を加えて位置から位置xまでゆっくり動かす際に外力がする仕事と電源が行う仕事との和が、コンデンサーの静電エネルギーの変化分に等しいことを用いて、におけるを求めよ。答はx,および問(c)で定義されたbを用いて表せ。ただし、起電力の電源が行う仕事は、電源の内部を負極から正極へ電荷Qが移動するとき、で与えられる。
(g) スイッチを閉じた状態で、誘電体を位置 ()から初速度0で放したところ、誘電体にはx方向の復元力が作用し、誘電体は振動した。問(f)のが誘電体の位置エネルギーとみなすことができることを用いて、位置xにおける復元力Fおよび振動の周期Tを求めよ。ただし、x軸の正方向を力Fの正の向きとする。答は、Fについてはx,および問(c)で定義されたbを用いて表し、Tについてはa,d,,m,,,のうち必要なものを用いて表せ。
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解答 コンデンサーに挿入する誘電体の形状が特殊なために計算量がかなり多く、問題文中でも色々と変数を定義していますが、これらをうまく使いこなせ、というのが出題者の意図だろうと思います。特に(h)では,
,,を利用して計算を進める必要があります。
[A](a) 図1のコンデンサーは、極板面積,極板間距離,真空の誘電率より、静電容量は、 ......[答] ・・・@ 図2のコンデンサーで、上側極板と誘電体上端との間のコンデンサーの静電容量,誘電体上端と下端の間の静電容量は、が、極板面積,極板間距離d,真空の誘電率,が、極板面積,極板間距離d,誘電体の誘電率より、 , ・・・A 図2のコンデンサーは、2個のと1個のが直列接続されたもので、 @より、
.......[答] ・・・B
(b) 図1のコンデンサーでは、
図2のコンデンサーで、コンデンサーの電圧を,コンデンサーの電圧をとします。直列接続なので、,には電荷が蓄えられます。よって、A,Bより、 , よって、 ......[答] 電圧一定のとき比誘電率の誘電体を挿入すると、コンデンサー内では電場の強さがになりますが、右図のような電気力線(電気力線の密度が電場の強さ)の図を描くことができます。誘電体中では電場はの強さに弱まるので、誘電体を入れると、電場が弱まる分だけ電荷はより多く蓄えられます。大小関係だけなら、計算せずに、こうした電場の状況を考察して解答することもできます。
[B](c) コンデンサーの静電容量は極板面積に比例するので、合成容量の式で、の係数がであれば、の係数は ......[ア] になります。つまり、 ・・・C のとき、図4より、極板からはみ出ている誘電体の面積は,極板に重なっている部分の面積は、 ......[イ]これをCのに代入すると、より、 のとき、をCに代入すると、 () ・・・E のとき、をCに代入すると、 () ・・・F D,E,Fより、
......[ウ], .......[エ], ・・・G @,Bより、
......[オ] ・・・H
(d) のとき、Hより、です。のとき、より、スイッチを開く時点で蓄えられていた電荷はで、スイッチを開いた後も変わりません。コンデンサーに蓄えられる静電エネルギーは、 ......[答]
(e) スイッチを閉じたままなので、コンデンサーの電圧はで変化しません。 ......[答]
(f)コンデンサーに蓄えられている電気量をとすると、においては、です。より、誘電体の位置が0からxまで変わる間に電源がした仕事(コンデンサーの過渡現象を参照)は、 ・・・I コンデンサーの電荷が減少するので、電源は仕事されていることになります。この間のコンデンサーの静電エネルギーの変化は、(e)の結果を用いて、
・・・J 外力がする仕事と電源が行う仕事Iの和が、コンデンサーの静電エネルギーの変化分Jに等しい(コンデンサーの過渡現象を参照)ので、I,Jより、 ∴ ......[答]
(g) (f)の結果のが誘電体の位置エネルギーなので、誘電体に働く力は、 ......[答] ばね振り子に働く力 (このときの位置エネルギーが)との比較より、のばね振り子と考えると、誘電体の運動方程式は、加速度をaとして、 ∴ これは角速度の単振動を表します。振動の周期Tは、bを使わずに答えるので、[オ]の結果を用いて、 ......[答]
(h) を求めるために、電源のした仕事と静電エネルギーの変化を求めます。なので[エ]の結果、Hより、 ・・・K 電源のした仕事は、
・・・L 静電エネルギーの変化は、
よって、(f)と同様に、外力がする仕事と電源のした仕事Lとの和は、静電エネルギーの変化に等しく、 これよりは、G,Kを用いて、 @,Bを用いて、
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