東大物理 '05 年 前期 [1] 図 1 のように、地球の中心 O を通り、地表のある地点 A と地点 B とを結ぶ細長いトンネル内における小球の直線運動を考える。地球を半径 R ,一様な密度 ρ の球とみなし、万有引力定数を G として以下の各問に答えよ。なお、地球の中心 O から距離 r の位置において小球が地球から受ける力は、中心 O から距離 r 以内にある地球の部分の質量が中心 O に集まったと仮定した場合に、小球が受ける万有引力に等しい。ただし、地球の自転と公転の影響、トンネルと小球の間の摩擦および空気抵抗は無視するものとし、地球の質量は小球の質量に比べ十分大きいものとする。 T 質量 m の小球を地点 A から静かにはなしたときの運動を考える。
(1) 小球が地球の中心 O から距離 r ( )の位置にある時、小球に働く力の大きさを求めよ。 (2) 小球が運動開始後、はじめて地点 A に戻ってくるまでの時間 T を求めよ。
U 同じ質量 m を持つ二つの小球 P , Q の運動を考える。時刻 0 に小球 P を、時刻 に小球 Q を同一の地点 A で静かにはなしたところ、二つの小球は OB の中点 C で衝突した。ここで二つの小球間のはねかえり係数を 0 とし、衝突後二つの小球は一体となって運動するものとする。ただし、 は問T (2) で求めた時間 T よりも小さいものとする。 (1) を T を用いて表せ。 (2) 二つの小球 P , Q が衝突してからはじめて中心 O を通過するまでの時間を T を用いて表せ。
V 問Uと同様に、時刻 0 に小球 P を、時刻 に小球 Q を同一の地点 A で静かにはなした。ただし、二つの小球間のはねかえり係数は e ( )とする。 (1) 二つの小球が最初に衝突した後、小球 P は地点 B に向かって運動し、地球の中心 O から距離 d の点 D において中心 O に向かって折り返した。このときの d の値をはねかえり係数 e および地球の半径 R を用いて表せ。
(2) 小球 P と小球 Q が二回目に衝突する位置を求めよ。
(3) その後二つの小球は衝突を繰り返した。十分時間が経過した後、どのような運動になるか答えよ。
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解答 地球の中心を通るトンネルを掘ったとして、このトンネル内で物体がどういう運動をするかという問題です。 '04 年に愛媛大学でも同様の問題が出題されています。 T (1) 半径 r の球の 体積 は ( この問題でも球の 体積 の公式は与えられていないので覚えておく必要があります ) ,この部分の 質量 は ......[ 答 ]
(2) O を原点とし、 OA 方向を x 軸正方向とする 座標 を考えます。
小球の 座標 が x ( )だとして、小球にはつねに中心 O に向かう 力 が働くので、 のときは x 軸負方向に、 のときは x 軸正方向に、 力 が働きます。 (1) の結果で とし、小球に働く 力 は方向も入れて と表せます。 小球の 運動方程式 は、 ・・・@ これは、バネ定数を とする、 バネ振り子 の運動方程式と同型です。 従って、小球は、 角振動数 の 単振動 を行います。 A 点を離れて A 点に戻るまでの 時間 T は、 単振動の一周期 に相当します。よって、 ......[ 答 ]
U (1) 小球 P は 時刻 0 に A 点 ( ) にいたので、 時刻 t における P の 座標 は と表せます。 小球 Q は 時刻 に A 点にいたので、 時刻 t における Q の 座標 は と表せます (Q が運動開始してからの 時間 は です ) 。 C 点 ( ) で両者が衝突するとき、両者の 座標 は等しく、 ∴ ∴ ∴ ・・・A また、 ∴ ・・・B A,B, より、 , .......[ 答 ] 三角関数を持ち出すのも遠回りです。高校の範囲では 単振動 を 等速円運動 している物体の正射影の運動 ととらえます。原点を中心とする 半径 R の円の周りを P と Q が等速円運動すると考えると、点 を出発して、 P が点 ,または に達するまでに円を 周,または 周回ります。 Q が遅れて を出発して、逆回りに回って P と出会うとすると、 Q の方が進み方が小さいので、出会うまでに、 P が 周, Q が 周まわればよいことになります。これで、 P が出発してから Q が出発するまでの 時間 は となります。円を描いて考えればほぼ直感的に明らかです。 (2) P と Q の 速度 は、 , ∴ 合体後の速度が 0 ということは、衝突地点 C 点は合体後の単振動の振動端 だということです。合体後振動端から振動中心 O までに要する時間は 周期の です。 合体後の運動方程式は、@において としたもので、角振動数、 周期 は合体前と変わりません。よって、求める 時間 は、 ......[ 答 ] 結局この問題を解くのには、衝突前の速度が等大逆向きで 運動量 の和が 0 であることしか使いません。これだけなら直感的に明らかなので、いきなり直感的に解答を求めることもできるでしょう。ただし、説明をどうするかという課題は残ります。 V (1) 衝突 後の P , Q の 速度 を , とします。 ∴ 反発係数 の式: ∴ ∴ ここで、小球の 位置エネルギー を考えてみます。 バネ定数 k のバネに物体をつけて、 自然長 からの 伸び縮み が x のときの 弾性力 による 位置エネルギー は、 で与えられます。 この問題でも、中心 O からの 変位 を x として、 x をバネの 伸び と考えれば、小物体が地球から受ける 力 は、バネに取り付けられた物体がバネから受ける 弾性力 と同じ形をしています。 バネ定数 のバネによる 弾性エネルギー を考えることにより、 座標 x の位置にいる、 質量 m の小球の 位置エネルギー を、 と考えます。 注意 地球の内側では、 距離 に対する 力 の依存の仕方が地球外と違うので、地球外での 万有引力 による 位置エネルギー の公式 は使えません。 C 点における P の 力学的エネルギー は、 運動エネルギー と、 位置エネルギー の和です。 D 点における P の 力学的エネルギー は、振動端で 運動エネルギー が 0 なので、 位置エネルギー のみです。 C 点と D 点との 力学的エネルギー保存 より、 ∴ ∴ ......[ 答 ]d は P の行う 単振動 の 振幅 です。 (2) 衝突後も両者の運動は単振動 です。 P と Q の単振動は、振動中心 O に関して対称な運動 になります。
その理由を考えてみます。 Q の衝突直後の 運動エネルギー は、 P の 運動エネルギー と同じです。 位置エネルギー も P と同じなので、 Q の力学的エネルギーは P の 力学的エネルギー と同じです。ということは、 Q も P と同様に、 振幅 d の単振動をします。 P , Q とも 周期 は T です。 衝突後、 Q は、中心 O を通過して に入り、 まで行って折り返してきます。 P は、 D 点で折り返し、中心 O を通過して に入り、折り返してきた Q と衝突します。 C 点で衝突した以降の運動は、 C 点で衝突するまでの両者の運動を、ちょうど時計の針を逆回しにしたような運動になります。 というわけで、 2 回目の衝突地点は、 C 点の中心 O に関する対称点 E(OA の中点で、中心からの 距離 が である点 ) になります。 OA の中点 ......[ 答 ] 式を立ててもできなくはないですが、煩雑なだけなので、運動の対称性 を利用して説明するのがよいでしょう。 (3) 1 回目の衝突地点は中心 O と地表の点 B の中点 C です。 2 回目の衝突地点は中心 O と地表の点 A の中点 E です。衝突地点は、この後、何度衝突しても変わることはありません。また、バネ定数 k と 質量 m は変化しないので、単振動の 周期 も変化せず T のままです。
衝突するごとに、 速さ が e 倍されます。それに伴い 運動エネルギー が 倍となり減少します。しかし、衝突地点が変わらないので、衝突直前直後の 位置エネルギー は毎回変わりません。衝突するごとに 運動エネルギー だけが減少して、 n 回衝突後に、最初の 倍になっています。十分時間が経過すると、 として、 となるので、最終的には衝突直前直後の 運動エネルギー は 0 になります。これは、単振動の 角振動端 が C と E であり、二つの小球が一体となって運動 することを意味します。従って、十分に時間が経過すると、 P と Q は、 一体となって OA , OB の中点を振動端とする単振動 ( 振幅は ,周期は T )を行う。 ......[ 答 ] 【広告】ここから広告です。ご覧の皆さまのご支援ご理解を賜りたく、よろしくお願いいたします。
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