東工大物理'22年前期[1]

1のように、直径の円柱形の台と、この台に支持され、台の底面からhの高さの平面内を台の中心軸周りに回転する長さr ()の回転棒と、この回転棒の先端に固定された大きさが無視できる質量mのおもりからなる装置が、水平な床の上に置かれている。この台の内部にはモーターがあり、上から見て反時計回りに回転棒を回転させることができる。回転棒の角速度ωは自由に変えることができる。モーターを含めた台の質量はMであり、その重心は台の中心軸上にある。回転棒は変形せず、その質量は無視できるものとする。また、空気抵抗は無視できるものとする。重力加速度をとする。

[A] 台と床の間の静止摩擦係数をμとする。RrhMmμが異なる複数の装置を作り、床の上に置いて、回転棒および台が静止した状態から回転棒の角速度をゆっくりと大きくしていった。すると、装置の違いによって下記の2つの場合があることがわかった。
【T】 台が傾くことなく回転棒の方向に床の上を滑り始める
【U】 台が床の上を滑ることなく回転棒の方向に傾き始める
ただし、【T】,【U】が起こる前に、台が床に対して回転することはなかった。以下の問に答えよ。

(a) 回転棒が回転していないとき、台が倒れないためには、がある値以上でなければならない。この条件を下記の式で表すとき、空欄()に入る適切な数式をRrを用いて表せ。

(b) 【T】が起こる場合、台が床の上を滑り始めるときの回転棒の角速度rMmμを用いて表せ。

(c) 【U】が起こる場合、台が傾き始めるときの回転棒の角速度RrhMmを用いて表せ。

[B] 台を床の上に固定し、モーターにより回転棒を一定の角速度ωで回転させておく。モーターは充分強力で、おもりは常に等速円運動を続けるものとする。この状態において、図2のように、長さの糸と大きさが無視できる質量の小球からなる振り子を上方から降ろしていき、おもりが通る円軌道上に小球を静止させた。その後、振り子の支点(小球とは逆側の糸の端)の位置は変えないものとする。
すると、おもりと小球が衝突し、小球は衝突時のおもりの進行方向に速さで動き出した。その後、小球は単振り子の運動を行い、。再び衝突地点まで降りてきた。この間、回転棒は台の周りを一周して、おもりと小球は1回目の衝突と同じ位置で2回目の衝突を行い、小球は衝突時のおもりの進行方向に速さで動き出した。小球とおもりの間の反発係数をeとする。
この
2回衝突の実験をremが異なる複数の装置と振り子を用いて行った。ただし、上記の衝突が起こるように、それぞれの装置と振り子において回転棒の角速度ωを適切に設定した。糸は伸びず、その質量は無視できるものとする。また、糸の振れ角(糸が鉛直線となす角)を超えることはないものとする。以下の問に答えよ。

(d) 1回目の衝突直後の小球の速さ2回目の衝突直後の小球の速さreωを用いてそれぞれ表せ。

(e) ある装置と振り子を用いて実験を行ったところ、糸の振れ角は充分に小さかった。このとき、小球の運動を単振動とみなすことにより、回転棒の角速度ωを用いて表せ。
(f) 前問(e)とは異なる装置と振り子を用いて実験を行ったところ、糸の振れ角は大きくなった。図3は、この実験における小球の運動の様子を、小球が動く平面に対し垂直な方向から見た図である。1回目の衝突後、小球は糸の振れ角がとなる位置Aで最高点に達した。このことから、1回目の衝突直後の小球の速さを用いて表せ。


(g) 前問(f)の実験において、2回目の衝突後、小球は糸の振れ角がとなる位置Bに達した。位置Bに小球が達するまで糸はたるまなかったが、小球が位置Bに達した直後から糸はたるみ、小球は放物運動を始めた。このことから、2回目の衝突直後の小球の速さを用いて表せ。

(h) (d)(f)(g)の結果を利用して、問(f)および(g)の実験における小球とおもりの間の反発係数eの値を求めよ。



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解答 見慣れない状況を扱いますが、東工大としては、幅広く基礎事項を問う内容になっています。[B]で、モーターが強力で衝突しても等速円運動が維持される、という設定は、衝突の瞬間に等速円運動を維持するための外力が接線方向に働く、ということを意味していて、衝突前後で運動量保存が成立しないことに注意してください。

[A](a) 右図のC(円柱台の下面端で回転棒直下の点)のまわりの力のモーメントを考えます(回転していないのでです)。反時計回りのモーメントは、台の重力によるモーメント,時計回りのモーメントは、おもりの重力によるモーメントです。台が倒れないときのC点のまわりの力のモーメントのつり合いは、
 ∴
台が倒れないとき、反時計回りのモーメントの方が大きく、
......[]

(b) 滑り始めるときを考えます。このときで、おもりが回転棒から受ける向心力は台の中心軸方向に,回転棒にはこれの反作用となる外向きの力が働き、回転棒が円柱の直径方向に移動しないために、この力とつり合う力をおもりとは逆方向に回転軸から受けます。すると、円柱台は外向き(おもりの方向)に大きさの力を受けます。円柱台が滑らないので、台と床の間の静止摩擦力f とすると、円柱台に働く力のつり合いは、
円柱台が床から受ける垂直抗力,滑り始めるとき静止摩擦力は最大静止摩擦力であって、
よって、 ∴
......[]

(c) 傾き始めるときで、台の中心軸には外向きにが働き、C点のまわりの力のモーメントは、反時計回りに,時計回りにであり、静止摩擦力のモーメントは0 (うでの長さが0)です。力のモーメントのつり合いは、
 ∴ ......[]

[B](d) 衝突前後において、等速円運動するおもりの速さはです。衝突により小球の速さは0からへと変化します。反発係数の式より、

 ∴ ......[]
1回目の衝突後に速さとなった小球は、力学的エネルギー保存より2回目の衝突直前も速さは(向きは逆)で、衝突後に速さになります。反発係数の式より、


......[]

(e) 単振り子の公式より、単振り子の周期は
単振り子の半周期は回転棒の等速円運動の1周期になるので、
 ∴ ......[] (問題文に、糸の振れ角は充分に小さい、と書かれているので、単振り子として考えます)

(f) A点と衝突地点との高さの差は,衝突地点を基準にとると位置エネルギーは衝突直後に0A点で運動エネルギーは衝突直後にA点で0です。衝突直後とA点との力学的エネルギー保存より、
 ∴ ......[] (糸の振れ角が微小と言えないので、単振り子として考えることはできません。不等速円運動を参照)

(g) 糸の振れ角がθのときの小球の速さをv,小球に働く糸の張力Sとすると、このときの重力の糸に沿う方向の成分は、支点に向かう向きを正として,小球の運動方程式は、
 ・・・@
衝突直後と振れ角がθのとき(衝突直後との高さの差は)、小球の速さをvとすると、運動エネルギーは,位置エネルギーはです。衝突直後と振れ角がθのときとの力学的エネルギー保存より、
を@に代入すると、
B点で,たるむ限界(張力を参照)なのでとして、

 ∴ ......[]

(h) (d)(f)(g)の結果より、
 ・・・A
 ・・・B
B÷Aより、 ∴ ......[]



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